2007年08月18日

ご当地葬儀事情

葬儀前日、Mじいとカタクリ夫人来訪。

M「こないだのFさんとこの葬儀は隣組で『お見送り』したけんさあ
 今度はやらないってわけにもいかんせ。
 何時か聞いてるかい?」
旦「は、お見送りですか?
 えーと、喪主さんからお願いされたのは会場でのお手伝いだけなんですが」
M「そりゃそうせ。お見送りってのはこっちの気持ちでやるもんだ。
 喪主さんからお願いなんかしないせ。
 こないだは葬儀会社の人から話があったが……」
旦「いやあ……何も聞いてないですね」
カ「ああ、今度は農協だからね。
 あの担当の人なんて、最近配置換えになって慣れてないからダメだわね」
M「ふん、ちょっと(喪家に)行って訊いてもらえばわかるこった」
旦「はあ……」


なんのお見送りかといえば、もちろん出棺。
その時間が何故、葬儀前に問題になるのか
ここをお読みになるほとんどの方はピンと来ないでしょうが
信州の大半の地域では、火葬後に葬儀という段取りなんですね。
で、棺(霊柩車)が喪家を出て火葬場に向かう時
隣組の人々が沿道で手を合わせて「お見送り」するわけです。

一説によれば、火葬→葬儀の「骨葬」は
養蚕が盛んだった時代に始まった慣習といいます。

お蚕さんの世話は一日たりとも手が離せない。

昔の葬儀は今よりずっと手間隙かかるものだったので
(なにせ、この辺りの隣組の始まりは
 死者が出たときご近所で墓穴を掘る受け持ちの単位だったとか。
 さすがに火葬が一般的になってからそれはないでしょうが
 それでも遺体を火葬場へ運んだりすることはやったでしょうし
 今でも「野辺の送り」の習慣が残っているところもあります。
 隣組が総出でお葬式のお餅をつく――というのも
 この辺りでもつい最近までごく普通にやっていたようです)
葬儀にかかる間の不手際でお蚕が全滅、それまでの苦労が水の泡
――って事態にもなりかねない。

それでは死者が出た家も、ご近所に顔向けできなくなる。
ならばひとまず遺体をお骨にしておいて
みんなの手が空いた時期に落ち着いてお弔いをしましょう
――ということだったようです。
(なぜ私がこんなことを知っているかというと
 仕事でいっぱい取材をしたから。経験的な知識じゃないですよ)


これって、生業を優先した合理的な考えである反面
それだけ葬儀はご近所総出で協力してあげるものという感覚。
なので時代が変わった現代でも
――これは地域住民にどれだけ古い人がいるかによるけれど――
隣組の葬儀のために会社を休む人はいるし
仕事を理由に葬儀のお手伝いができないなんて言えば
陰で大ブーイングが巻き起こる場合もあるわけですわ。


この事情を踏まえて。

M「Kさんちは連絡が取れたかね」
旦「いやそれがずっとお留守で。手紙は置いてきているんですが」
M「留守宅に書置きしても埒があかんだろう」
カ「Kさんの実家はすぐそこよ。K○××さんのとこ」
旦「はあ……」


旦那の様子に不本意気な顔でMとカがお引取りになった後
旦「じゃあ俺、ちょっとお見送りの時間を聞いてくるよ」
私「じゃあ私はK○××さんちの電話を調べとく」
旦「……そこまでやる?」
私「やれってことよ。あの2人が来たのは」
旦「でも、うちだって旅行先にまで連絡が来たけど
 それで慌てて帰って来たりしなかったぜ」
私「それはそれ。
 今うちが言われた事やっとかないと
 『組長が連絡くれないから不義理してしまった』って言われかねないわよ」


(長くなったので続く)

posted by 水島美也子 at 10:44| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記071 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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